読みもの・ガイド 学校選びの視点

中学受験と高校受験、どっちで入る? — データで見る東京の分岐点

ガクリサ編集部2026.07.17 ・ 読了 約6

「中学受験と高校受験、うちはどっちで挑むべきなのか」。小学校の中学年くらいから、多くの家庭がこの問いに向き合います。どちらが正解というものではありません。子どもの成熟度も、家計も、通える範囲も家庭ごとに違うからです。ただ、東京にかぎって言えば、この10年ほどで「そもそも高校からは入れない学校が増えている」という構造の変化が起きています。判断の前提が変わっているのです。

この記事では、その変化をガクリサ(gakurisa.jp)に集めたデータで整理します。中学受験を煽るためでも、高校受験を軽んじるためでもありません。分岐点に立つ家庭が、事実を踏まえて自分たちなりの答えを出せるように、材料を並べます。数値・校名はすべてガクリサ調べ(公開情報ベース・2026年7月時点)です。

東京で進む「入口が中学だけ」の学校

まず押さえておきたいのが、東京都立の中高一貫校です。ガクリサに載る都立の中高一貫は10校あり、その全校が高校からの募集をしていません。内訳は2種類に分かれます。

ひとつは6年間で完結する中等教育学校で、小石川・桜修館・立川国際・南多摩・三鷹の5校。こちらはそもそも高校段階での入学枠がありません。もうひとつは、もともと高校があって中学を後から併設した「併設型」で、白鷗・両国・武蔵・富士・大泉の5校。こちらは以前は高校からも入れましたが、現在は高校募集を停止しています。つまり、かつては高校受験で狙えた学校が、いまは中学受験でしか入れなくなっているわけです。

この流れは私立にも広がっています。ガクリサのデータでは、学校紹介文に「高校募集を停止した」旨の記載がある私立高校として、獨協・穎明館・富士見・本郷・恵泉女学園・吉祥女子などが確認できます。いずれも人気校や伝統校で、中高6年間の一貫教育に舵を切った学校です。ここで大事なのは、こうした学校を第一志望に考えるなら、入口は中学受験しかない、という事実です。

「高校から入れない学校」が意思決定を変える

高校受験を前提に学校選びを進めていて、いざ調べてみたら第一志望に高校の入口が無かった——。これは珍しい話ではありません。ガクリサには高校426校・中学199校が載っており、中学と高校の両方を持つ併設ペアは186組あります。その一方で、中学のページはあるのに高校のページが無い学校、つまり実質的に高校から入れない学校が12校あります。中等教育学校や完全一貫校がこれにあたります。

数だけ見れば12校は多くないように思えるかもしれません。けれど、この中には各家庭にとっての「憧れの一校」が含まれることが少なくありません。第一志望が中学でしか入れない学校なら、高校受験でいくら実力を伸ばしても、その扉は開かないのです。逆に、志望校が高校募集をしっかり続けているなら、中学段階で無理に受験に踏み切る必要は薄いとも言えます。

だからこそ、進路を「中受か高受か」という抽象的な二択で考える前に、まず具体的な志望校が高校からの入学を受け付けているかを確認することが、遠回りに見えて一番の近道になります。入口の有無は、他のどんな条件よりも先に効いてくる前提条件だからです。

費用は「入口」だけでなく「別建ての塾代」も見る

お金の話も避けて通れません。ここでも中受と高受で構造が違います。

ガクリサで初年度納入金を公表している私立中学54校を集計すると、平均は約99万円(989,966円)、中央値は約99万円(989,500円)でした。一方、都立の中高一貫や国立の中学は義務教育にあたるため授業料はかかりません(制服代や修学旅行の積立などの学校徴収金、給食費は別途必要です)。高校側を見ると、私立高校の初年度納入金の平均は約98万円で、私立中とほぼ同水準です。

金額の表を並べると、私立中と私立高は初年度で見るとどっこいどっこいに見えます。ただし、中学受験にはこの学費とは別に、通塾費用が大きくのしかかるのが一般的です。中学受験は小学校で習わない範囲まで踏み込むため、多くの家庭が数年にわたって進学塾に通います。ここでかかる費用は学校の学費とは別建てで、決して小さくありません。高校受験にも塾代はかかりますが、中学受験ほど早い時期から長期にわたるケースは相対的に少ない、というのが一般的な傾向です。

つまり費用の比較は、「入学後にかかるお金」だけでなく「入学までにかかるお金」まで含めて見ないと実像を見誤ります。私立中の学費が私立高と同じくらいでも、そこに至る準備コストが違うのです。ここは各家庭の家計と、いつから準備を始めるかの時間軸をあわせて考えるところです。

偏差値の「ものさし」は中受と高受で別もの

もうひとつ、混乱しやすいのが偏差値です。ガクリサでは中学の難易度に四谷大塚の80偏差値を、高校には高校受験の偏差値を用いていますが、この2つは別のものさしです。

同じ学校の中学と高校でも、中受偏差値と高受偏差値の数値をそのまま並べて比べることはできません。母集団も、試験科目も、受験する層も違うからです。中学受験をするのは学年の一部で、そこには早くから準備を重ねた層が集まります。高校受験は多くの中学生が経験します。母集団が違えば、同じ「偏差値50」でも意味するものは変わってきます。

ネットではよく「中受の偏差値50は高受の偏差値60くらいに相当する」といった換算が語られますが、こうした俗説は断定できるものではありません。学校ごとに事情が異なりますし、換算の根拠も曖昧です。偏差値は志望校選びの入口としては便利な指標ですが、中受と高受をまたいで直接比較する使い方には向いていません。数字を横断して見るときは、あくまで別々のものさしだと意識しておくと、判断を誤りにくくなります。

判断フレーム:家庭で確かめたい5つのこと

ここまでの内容を、家庭で話し合うためのチェックリストにまとめます。順番に確かめると、自分たちの答えが見えてきます。

このどれかひとつで決まるものではありません。5つを重ねて眺めたとき、自然と傾く方向が、その家庭にとっての答えに近いはずです。

ガクリサでの調べ方

最後に、ガクリサでこの分岐点を調べる手順を紹介します。ガクリサは偏差値や住所だけでなく、校風や自分との相性で学校を地図から探せるサイトです。

学校一覧や地図には段階フィルタがあり、「中学」と「高校」を切り替えて表示できます。まず高校で第一志望を探してみて、見つからなければその学校が高校募集をしていない可能性を疑う、という使い方ができます。中学と高校の両方を持つ学校の詳細ページには併設校へのリンクがあるので、「中学から入るとどんな高校生活につながるのか」を行き来しながら確かめられます。

中受か高受かは、入口の選択であると同時に、6年間か3年間かという育ち方の選択でもあります。数字と校風の両方を見比べながら、お子さんに合う入口を探してみてください。

データについて

本記事の数値・校名はガクリサ(gakurisa.jp)が公開情報をもとに集計したものです(2026年7月時点)。掲載校数は高校426校・中学199校、中高併設ペア186組、中学のページはあるが高校のページが無い学校12校。私立中の初年度納入金は公表のある54校の集計で平均989,966円・中央値989,500円、私立高の初年度平均は約98万円です。都立・国立の中学は義務教育のため授業料はかかりません(学校徴収金・給食費は別途)。中学の偏差値は四谷大塚の80偏差値、高校の偏差値は高校受験の指標を用いており、両者は別のものさしのため直接比較はできません。学校の設置状況や募集は変更される場合があるため、最新の情報は各校の公式発表でご確認ください。

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